マッシモ宮(ローマ国立博物館)の休む挙闘士 Tag

Il Pugile a riposo di Palazzo Massimo alle Terme di Claudia Viggiani クラウディア・ヴィッジャーニ Tradotto da Natsuko Ohashi 大橋 奈津子・訳 Tratto dal libro "Roma con i miei occhi" 私の目で見たローマ 親愛なる挙闘士、椅子に腰掛け、あなたと何時間でも話していたいほどです。でもそれは許されてはいない。 そこで私はメモ帳を手に取り、たくさんのページの中から、あなたについて書いたこと全てを探す。ページいっぱいにたくさんのメモ。それに加え、ちょっとした考えのようなものが、時とともに書き直されていたり。 心を込めて、あなたに話します。あなたについて話します。決して忘れないために。 あなたは紀元前4世紀から紀元前2世紀の間に、無名の芸術家によって完成された。その芸術家は、紀元前4世紀に生きていたリシッポという偉大なギリシャ人の彫刻家を愛していた。 あなたは1885年とずいぶん昔、サン・シルヴェストロ・アル・クイリナーレ教会の建設時に偶然発見された。おそらくそれは、あなたが、4世紀に建設されたコスタンティーノの浴場を飾る彫刻のうちの1つだったからだろう。 ローマ帝国の終わりに、異民族の侵入やこの先起こりうる破壊からあなたを守ろうと、誰かがあなたを意図的に隠したのだ。 [caption id="attachment_17207" align="alignleft" width="233"] Pugile a riposo, tra il IV e il II secolo a.C., Museo nazionale romano di Palazzo Massimo, Roma[/caption] 憎しみの感情よりも長く生き残るためにあなたを敵から逃れさせるとは、なんて勇敢で気高い行為なのだろう。 あなたを救い出し私達の時代にまで残すよう、協力しあってくれた方々に心から感謝している。彼らの存在無くしては、あなたはここに存在していないのだ。あなたをとても愛していたはずで、おそらく崇拝もしていたことだろう。金属でできたあなたの身体にすり減った跡がいくつか残っていることから、あなたを大切に撫でていた様子がわかる。 左の頬骨の上のあざがよりくすんだ合金でできていたり、傷口や乳首、唇、グローブの縫い目やベルトは銅でできてはいるが、あなたはブロンズ像である。 おそらく色のついた石かガラス玉、象牙でできていたはずの目の中の部分が、あなたには無い。 一時期、あなたはここから遠く離れた所にいた。ニューヨークへ連れて行かれて展示され、また修復もされている。こうした状況の中で、あなたの身体は8つのパーツからできていて、くるぶしから先の足の部分は、また別に作られていることがわかった。 あなたの身体にはたくさんの傷がある。決闘が早く終わることを確実なものとするために、鉛や釘の鋲で補強されたグローブによってもたらされたものだ。 闘いの舞台は、最終ラウンド。最も厳しい部分で、過激で破壊的で血まみれの瞬間である。 古代ローマ人達はスピーディな戦い、すなわち短時間で終わる戦いを望んでいた。このため、挙闘士達は上半身を殴り、血生臭い残酷さで、相手の顔を攻撃した。 あなたは休もうと腰掛け、誰かを見ようと振り返っている。何か言おうとしているのかもしれない。 [caption id="attachment_17211" align="alignright"...